北海道旭川市で14歳の中学生だった爽彩さんが複数の少年たちにイジメられた末(すえ)に、命を落とした。
母親はこう言った。
「イジメって簡単に人が死んでしまうということを知ってほしい。イジメは間接的な他殺です」
親ひとり、子ひとりの家庭で、たったひとりの家族である娘を失う悲しみは、この世の悲しみの中でも最大のもの。
爽彩さんは、成人するどころか青春を謳歌することもなく、人生の伴侶と出会うどころか恋を十分に経験することもなく、将来の夢をかなえるどころか“今を生きる”苦しさに耐えられずに人生を閉ざされてしまった。
閉じたのではなく、閉ざされた。
きっと、同じ思いをしている中学生がどこかにいるのだろう。
大人たちは忘れている。
子どもの頃の時間の流れと大人の時間の流れが違うことを。
子どもの頃の時間は、とてもゆっくりと流れ、長く感じられるもの。
大人になってからのように、あっという間に過ぎていく時間感覚ではない。
それに、大人のように「人生色々」「酸いも甘いもあるのが人生」なんて思えないのが子どもの頃の“感覚”。
子どもころは未来があるようで、遠い世界の話のように感じるもの。
子どもの心は無限の宇宙が広がっているように思えて、実は「家庭」と「学校」という狭い世界に縛られて生きている。
中学生にとって「学校」は「生きる力」にもなれば、「死にたくなる力」ともなる。
「楽園」のように感じる子もいれば、「地獄」にいるような苦しみを味わう子もいる。
そうした子どもの頃の感覚を大人になると忘れてしまう。
思い出せない。
大人は大人の感覚で子どものことを考える。
中学生という年代にとって、友人関係は「生死を左右しかねない問題」だということを、大人たちがどれだけ分かっているのか?
学校の中でイジメを受けるという事は、その子にとっては、目の前には真っ暗な闇しか見えず、しかも背後から怪物が襲ってくる恐怖を感じる状況。
大人たちは勘違いをしている。
大人の世界のパワハラと子供の世界のイジメでは、その感じ方は少なくても数倍、いや数十倍の違いがある。
学校の中でイジメを受けるということは、「生きる空間がない」ということであり、「前に進もうとしても背後から押さえつけられたように一歩も動けない」という感覚でしかない。
苦痛、悲哀、悲惨、自虐的、自己否定、自己嫌悪、そして生きる力の喪失。
何をしても、どこにいても、イジメの恐怖と苦痛を常に感じている。
胸の中にナイフが刺さっているような痛みが走っている。
イジメは、思春期の子たちが「死を選ぶ」理由の大きな要因。
いま、爽彩さんのように「イジメを受けて苦しんでいる子」がいたら、その人たちに伝えたい。
イジメられてるあなたに訊きます。
イジメている人間を喜ばせたい?
それともイジメている人間に復讐したい?
「復讐なんてできない」って言う子がほとんどかもしれないね。
イジメをする人間と闘ったり復讐したりすることなんかできない、と言うでしょう。
でも、それが出来るんだよ。
それは「あなたが絶対に死なないで、大人になり、幸せに人生をおくること」です。
あなたがイジメから逃げきって、自分を守り、生き延びること。
それがあなたをイジメた人間への最大の報復だよ。
見せてやりなよ、将来、幸せになったあなたを。
見せてやりなよ、夢をつかんだあなたを。
見せつけてなりなよ、イジメをする邪悪な人間から生き延びたあなたを。
学校のイジメは、学校を卒業して別の進路、違う人生を歩んだ時点でなくなります。
物理的にできなくなります。
問題は、長く感じる学生時代の苦しい時間にいかに耐えるか、いかに乗り越えるか、ということ。
僕から提案するよ。
学校なんて行かなくていい。
「逃げなさい」
イジメをする邪悪な人間から。
自分を守って!
あなたをイジメる相手から。
教師が頼りないこともあるでしょう。
親が気づかないこともあるでしょう。
クラスメイトも知らない振りをすることもあるでしょう。
でも、10人のうち、9人の親は子どもを助けます。
子供を守ろうとします。
それを知ってください。
親に援けを求めることは、自立心が芽生え始めた中学生にとっては「屈辱」でしょう。
親に心配かけてしまうことは大人の階段を一歩踏み出した中学生にとっては「自尊心が傷つく」でしょう。
それでも自分を守って。
それでも援けを求めて。
そして生き抜くんだ。
学校なんか行かなくてもいい。
学校のクラスメイトがイジメを知らない振りをするならば、そんな友達はいなくていい。
中学生にとっては「友達がいない」ということは、大人の「一人で寂しい」の数倍の辛さがあるということは分っている。
でも、それでも自分を守ることが大切。
逃げるは恥じゃない。
自分を守ることは悪いことじゃない。
誰かに援けをもとめることは恥ずかしいことじゃない。
イジメる人間と接触しないようにすることが一番重要。
生き延びるんだ!
イジメという人生の氷河期を乗り越えること、サバイバルするんだ!
ジャングルで襲い掛かってくる獣から逃げるんだ!
獣に見つからないように身を隠すんだ!
獣から遠ざかるんだ!
サバイバルが成功したら、あなたはイジメる邪悪な人間に勝利したことになる。
イジメられてあなたが死を選んだら、イジメた奴らを喜ばせることになる。
そんなことは許せない、でしょう。
生きるんだ!
サバイバルするんだ!
逃げるんだ!
隠れるんだ!
そして、生き延びて幸せな人生を歩むんだ!
夢をつかむんだ!
イジメた人間よりも長生きするんだ!
それがあなたができる復讐戦です。
イジメを解決できないと思ったら逃げて。
イジメに耐えられなかったら隠れて。
そして、生き延びるんだ。
今は理解できないかもしれないけど、いつか笑える日がきます。
いつか「生きていてよかった」と思える日がきっとやってきます。
なぜ、そんなことを言えるのか? って?
それは僕が、死を選び、そこから生還したから。
同じような経験をしているから。
だから、僕の言葉を信じてください。
生き延びるんだ。
それがあなたをイジメる邪悪な人間との闘いです。
親はあなたの想像以上にあなたを思っています。
援けを求めてください。
もし、孤独ならなにか自分の世界を見つけてください。
そしてそれを「生きる力」や「将来の職業」としてください。
イジメられて「死にたい」と思っているあなたに必要なことは「生きる力」。
生きる力になる“何か”を見つけてください。
生き延びて、あなたをイジメた奴らを悲しませてください。
生き延びるのです。
それが奴らへの復讐です。
つばさ